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インタビュー:佐伯侑美さん「身の回りのことは、自分でつくる」

日々手仕事をしている佐伯侑美さんにお話をうかがいました。



▼「そういう家系」

瀬戸内海に面する四国愛媛県、目の前に山や川がひろがる西条市の山間に三人きょうだいの長女として生まれる。実家が農業をしていたこともあり、祖父や祖母、父母たち、家族は、苗の準備や収穫など、皆それぞれ、毎日何かしら、手を動かしていた。作物に限らず、道具の手入れやちょっとした小屋をつくるなど、身の回りのことを自分たちの手仕事でまかなうことが日常だった。侑美さんが「逆上がりができない…」と祖父に伝えたら、練習用の鉄棒をつくってくれたこともあった。素敵な型の洋服を見かけた後日、祖母が「はい、着てみて」と同じような型の洋服をつくって持ってきてくれた事もある。侑美さんご自身も「ちょっと細工する」とノコギリをひくこともあった。「まず、買う」という発想がうち(家)にはなかった、「つくる」ことが自然、そういう家系で育ってきた。



▼「刺子との出会い」

ご主人と結婚し、現在は香川県在住。今は仕事の傍ら、薬膳やDIY、読書など、家にいながら暮らしを少しずつ充実することを愉しんでいる。身の回りを眺めていたある日、目にとまったのが「刺子」。

「文様自体は古典的だけれど、それが素敵に想えて…。」

刺子とは、晒(さらし)など日常使いの布に文様を縫う刺繍のこと。工芸品ではなく、ふきんに使われていた。文様が可愛らしい上に「使える!」というところが魅力で、刺子をやってみたくなった。

まず、つくり方を参考にして、一枚、自分でつくってみたら、達成感があった。もう一枚、また違うパタンでもう一枚…と手を動かしていたら、何枚かできてきた。

そのうち「友人にプレゼントしたら喜ばれて、私も嬉しくなって、また、つくって…」と繰り返し。今回、そうやって出来た作品の一部をご覧いただきます。



▼「文様に込められた意味。」「使い道は、様々でOK…」

刺子の文様は、麻の葉や青海波(せいがいは)など自然を象ったものや、七宝(しっぽう)や矢羽根(やばね)など縁起物、漁師の網など生活の道具からパタン化されている。それぞれの文様に意味があり、例えば、麻の葉は成長が早く生い茂るので出産のお祝いに、○(マル)で構成される七宝のパターンはカドがないので平和や家庭円満を象徴していたり…。

意味をうかがうと「なるほど」と思う。文様一つ一つの意味を知るのも楽しい。詳細は会場で見て、聞いてみていただければ。その時の気持ちに応じて文様や色を選んだり、贈り物の場合は、相手の気持ちや生活を想像して気持ちに寄り添いながら、選ぶのも楽しい。


晒に糸というシンプルな素材だけど、一枚一枚、表情が違う。「好きな柄を選んでもらって、使い方は自由な解釈で。新しく編みだしてもらえると嬉しいです」と見るだけでなく、ふきんやハンカチにも、折ってブックカバーにもなる。

侑美さんは食器拭きに使っているそう。「お皿にフワっとかけるだけでも、楽しくなるんですよ。苦手な食器拭きも、刺子があると、少し気持ちが軽くなる気もします…」




▼「実は凝り性…。

居間で一日1、2時間作業したり、仕事の合間に針を動かしたり…と。

手作りな好きな侑美さんは、実は凝り性な面もある。手を動かし始めると止まらなくなる自分を知っている。「徹夜でものをつくってしまったり、それは敢えてしないようにしています。このサイズをちくちく縫っていく、完成の時が見えている刺子が、私にはちょうどいいところもあるんですよ。」と語ってくれた。


日々のリズムのなかで、静かに自分を整えながら、平静を保つ。

佐伯さんの息づかいと作品をご覧ください。



日程:2020年7月12日(日)

時間:9:00-16:00

場所:Chiiori Utazu Branch


佐伯 侑美(さいき ゆみ)

1983年愛媛県生まれ。香川で仕事や主婦業の傍ら、刺子づくりや薬膳料理など、暮らしを愉しむ手仕事を続けている。大人向けの読書会bibluvも主宰。


★Chiiori Utazu Branch カフェのご利用

当日は、カフェもオープンしています。

お茶を飲みながら、ゆっくり、作品をご鑑賞ください。

珈琲:550円(Hot/Ice)

紅茶、お茶もあります。




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